認知症に関連した過去の離婚判例

アルツハイマー病が原因となった離婚請求が認められた事案

アルツハイマー病に罹患して、寝たきりで会話もできない状態となり、禁治産宣告を受けた妻に対する 夫からの離婚請求について、病気の性質等に照らせば、強度の精神病(民法770条1項4号)に該当 するか否か疑問が残るとして、同号に基づく離婚請求については、認容しなかったものの、婚姻関係の 破綻を認め民法770条1項5号に基づく離婚請求を認容した。

原告:夫(42歳)
被告:妻(59歳)の後見人である弁護士

昭和46年
婚姻(子どもなし)
昭和58年
妻:アルツハイマー病・パーキンソン病と診断
夫:この頃から、家事一切を行う様になる
昭和59年
妻:寝たきり状態になる(会話もほぼ不可能)
昭和61年
妻:特別養護老人ホームに入所
平成元年
妻:禁治産宣告確定

第一審判断の要旨(長野地判平成2年9月17日)

夫(原告)・妻(被告)間の婚姻関係は、妻がアルツハイマー病に(同時にパーキンソン 病にも)罹患し、長期間にわたり夫婦間の協力義務を全く果たせないでいることなどによ って破綻していることが明らかであり、夫が離婚後も妻への若干の経済的援助および面会 などを予定していること、妻の両親はすでに他界し、親族の異父兄とはほとんど交流がな いこと、妻は現在老人ホームに入所しているところ、離婚後の老人ホーム費用は全額公費 負担になる予定であることを併せて考慮すれば、夫の民法770条1項5号に基づく離婚 請求はこれを認容するのが相当である。
なお、妻の罹患している病気の性質、及び妻に対 する精神鑑定が禁治産宣告申立事件のためになされたものであることなどの理由により、 本件の場合が民法770条1項4号に該当するか否かについては疑問が残るので、同号に よる離婚請求は認容し難い。

痴呆化した精神状態が原因となった離婚請求が認められた事案

てんかん発作を繰り返した結果、脳組織が損傷して認知症となった妻に対する夫からの離婚 請求について、妻の精神状態は、夫婦の同居協力扶助義務を果たすことが全くできない程度 に痴呆化しており、改善の見込みがないことを理由に、民法770条1項4号に基づく離婚 請求を認容した。

原告:夫
控訴人 妻
被告・被控訴人

昭和46年
妻:てんかん発作、以後通院・服薬開始
昭和47年
結婚
昭和48年
長男出生
昭和51年
二男出生
妻:全身性硬直間代発作が頻発するようになる
夫:家事・育児を行うようになる
昭和55年
妻:重篤な状態となり入院
昭和56年
妻:禁治産宣告確定

控訴審判断の要旨[東京高判昭和58年1月18日

妻の精神疾状は基底に精神薄弱があり、反復するてんかん発作のため脳組織が損傷され、脳実質が広範に 委縮した器質的障害によって結果した痴呆化である。
そして、今後さらにてんかん発作を引き起こせば痴 呆化がより進行することが予想され、現在の精神状態が改善される見込みはない。
 夫は、離婚しても妻が生活保護を受けて療養できるよう、福祉事務所に申し出て生活扶助措置を講ずる ことへの了解を得るとともに、入院中の病院からは生活保護に基づく医療扶助が決定された場合に担当機 関の指定を受けることの内諾を得ており、また、夫は離婚後もできるだけ妻に面会に行き、子どもらに会 いたいと言えば面接させ、妻を精神的に援護すると誠意を示している。
 右認定の事実によれば、妻の精神状態は、夫婦の同居協力扶助義務を果たすことが全くできない程度に 痴呆化していて、それがさらに進行する可能性はあっても、改善の見込みがないから、離婚原因としての 「強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき」に当たると解するのが相当であり、妻の病状にかかわ らず、夫と妻の婚姻の継続を相当を認める場合には当たらないというべきである。

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